同一労働同一賃金対応
1 「同一労働同一賃金」の意味
いわゆる同一労働同一賃金は、労基法改正と並ぶ働き方改革の柱として位置付けられ、当時の安倍内閣によって強力に推進された政策であり、安倍首相(当時)が「同一労働同一賃金を目指す」と宣言した際は、大きな驚きをもって受け止められました。
非正規社員の待遇改善に期待が高まる一方、欧米のように職務の範囲が明確に定められた上で、同じ職務に対しては同じ賃金を支払うという本来の意味での同一労働同一賃金とは異なる内容であり、政治的スローガンに過ぎないのではないかという批判もあります。
2 パート有期法の施行とその概要
有期契約社員と正社員との間の不合理な待遇差の禁止(均衡待遇)は、以前から労働契約法旧20条に規定されていました。
また、短時間労働者と正社員との間の不合理な待遇差の禁止(均衡待遇)と差別的取り扱いの禁止(均等待遇)が、旧パートタイム労働法8条及び9条に規定されていました。
そして、同一労働同一賃金の立法化に際しては、労働契約法旧20条の内容が旧パートタイム労働法に統合され、旧パートタイム労働法はパート有期法へと名称が変更されました。
改正前との大きな違いは、有期契約社員と正社員との間にも均等待遇が規定されたこと、待遇差の説明義務が強化されたこと、不合理性の判断基準がガイドラインにより明確化されたこと、違反が明らかな場合は行政の助言・指導等の対象となったこと等です。
3 最高裁判決
正社員と有期契約社員、正社員と短時間労働者との待遇差の不合理性はどのような枠組みで判断されるのか、また、基本給、賞与、退職金、手当等について、どのような場合に不合理とされ、どのような場合に不合理でないとされるかは、令和2年10月に出された以下の一連の最高裁判決が参考になります。
・大阪医科薬科大学事件判決
・メトロコマース事件判決
・日本郵便(東京・大阪・佐賀)事件判決
これらは、労働契約法旧20条に定める不合理な待遇差が問題となった事例ですが、これらの最高裁判決の判断の枠組みは、立法化の経緯からパート有期法における不合理性の判断にもあてはまるものと考えられています。
また、パート有期法の施行以前に出されたハマキョウレックス事件判決及び長澤運輸事件判決(最判平成30年6月1日)も参考になります。
同一労働同一賃金への今後の企業の対応は、ガイドラインとこれらの最高裁判決を参考にして検討されることになりますが、まず、自社従業員の雇用管理と待遇の状況を洗い出し、待遇差の有無を確認し、待遇差がある場合には不合理でないことをどのような説明できるかを確認する必要があります。